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寝違いによる頸肩部痛の一症例
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2019/05/19

寝違いによる頸肩部痛の一症例

発表:岸田美由紀



●結果
初回の治療後、ドーゼオーバーによって悪化した後、治癒した症例。

●診察について
・初診時について
患者は、70代女性。主婦。5年前から五十肩、頸腕症候群として保険で治療している。治療頻度は1週間〜2週間に1回。

・主訴
右側頚部から右肩上部にかけての痛み。首を回旋すると痛む。
特に思い当たる原因なし。朝起きていたら痛みがあったのとのこと。

・その他の愁訴、既往歴、現病歴、家族歴
〔現病歴〕
来院当初は左頸肩部の痛みや上肢のしびれであったが、1年ぐらい前から右肩の痛みをよく訴えるようになった。常に右肩の痛みやだるさは訴えるものの、首が動かせないほどの痛みではない。
〔その他愁訴〕
3年半前から耳の聞こえの悪さを訴える。
                              
・四診法
脈診:沈数実ショク 左関上、肝脈が浮
腹診:丹田実
尺膚:ショク
右側頚部、胸鎖乳突筋の後ろを探ると細く熱感を持ち緊張した筋が触れる。

●考察と診断
・西洋医学や一般的医療からの情報
側頚部から肩上部にかけての痛みは、触覚所見から後斜角筋の緊張と炎症があるものと考える。

・漢方はり治療としての考察
思い当たる原因がないとのことであるが、脈診に左関上肝脉が菽法に治まらず、尺膚と脈がショクであるため寒邪に筋が傷られたために発症したと考える。

●治療経過
 ・初診時の治療 初回治療 2月初旬
証:肝病 竅陰(足)(営気の瀉法)
脈診実と丹田実から瀉法を用いることを決定。脈数から陽経、ショクから金穴竅陰(足)を用いることを決定した。治療側は臍傍の抵抗を診て右と判断した。
用鍼は、テイ鍼であるが鍼体が森本式や二木式のように太さに変化がなく、鍼先が松葉型で尖り、反対側は平らで、角が削ってあり丸みを帯びている。
 手法は、鍼先の反対側を垂直に経穴に当て、押し手で邪の反応がある所まで押し下げていき、反応のある所まできたら押し込んで抜針した。
 標治法は横臥位で反応部位の虚実を診て、それに対応した虚実手法を鍼で行い、背部全体を弛めるために知熱灸を肩中兪と大腸兪に施した。
 患部の右肩上部の炎症がとれていないため、熱感と緊張が緩む右側頚部、後斜角筋の付着部〜肩上部に瀉法鍼を施した。

●患者への説明
 今回の治療で痛みは十分にとれないため、できるだけ近いうちに来院してもらうように告げた。
 帰り際、患者さんの患部の気が十分に動かずくすぶっている感じがして、翌日悪化しているかもという嫌な感じがした。

●継続治療
・2回目治療 翌日
 前日よりも悪化し首が全く動かず。
治療
 証:肝病 右光明(営気の瀉法)
 標治法:(横)散鍼
 ドーゼオーバーにより悪化させたため、今回はできるだけ軽めに施術を行った。
 治療終了後、患部のスムーズな気の動きが感じられため、患者さんに、痛みは軽減するがまだ完全に取り切れないことを告げ、近いうちに来院してもらうようにした。

・3回目 3日後
痛みはずいぶんとれた。まだ芯が残るような感じで痛みあり。
証:脾病 右商丘(営気の瀉法)
標治法:(腹)散鍼 知熱灸2壮大腸兪、肩井

・4回目 6日後
痛みはほとんどよい。左手のしびれを訴える。
証:脾病 右商丘(営気の瀉法)
標治法:散鍼 知熱灸2壮天ヨウ

●結語
・結果
 4回目の治療にて、主訴部の右側頚部から肩上部にかけての痛みはなくなったので、寝違いは治癒したと考えた。現在は今まで通り頸肩部に対する治療を継続中。

・感想
 今回の失敗は、痛みがひどいにもかかわらず、瀉法鍼のドーゼを過ごしてしまったことにより起きたと考える。ドーゼを過ごした原因は、私の注意力散漫によるものであり、急性期のひどい疼痛は慎重に対処しなければいけないのに、筋の炎症には瀉法鍼と安易に考え用いたことから起きた。以後、注意していきたい。



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