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滋賀漢方鍼医会  シンポジウム

「婦人科疾患について」


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(古木)
 恒例のシンポジウムをこれから始めます。シンポジストの方は岸田先生、飯田先生、この両名のお話になります。婦人科疾患の治療ということですが、範囲が広いので、お二人とも月経異常を中心とした話になるようですから、その点をご理解の上で聞いていただきたいと思います。時間は最初12分、残り3分で補足していただき、一応前半30分でシンポジストの話を終わり、その後はフロアーから主として月経異常に関するような質問、または意見という形で進めて参りますので、よろしくお願いします。それでは、最初に岸田先生、よろしくお願いします。

 

(岸田)
 よろしくお願いします。婦人科疾患のシンポジウムということで、お引き受けしましたが、私のところでは正直、婦人科疾患でみえるという患者さんはそれほどおられません。更年期で肩こりとか、他の不定愁訴を訴えてみえる患者さんはたくさんおられるのですけども、特に月経がこないとか、異常であるというような訴えでは来院されません。私自身も女性なのですが、なかなか月経について聞くというのはちょっと変ですが、ためらいみたいなものがあって、あまり臨床室でも聞いてはいません。それで、シンポジウムを引き受けてしまったのですが、やはり女性として婦人科疾患のことを知っておかないといけませんし、一昨年に県の鍼灸師会で婦人科疾患の講習会というのを受講しまして、一応勉強はしていたのですが、それほど熱心にはやっておりませんでしたので、もう一度勉強しなおすということで取り組みました。それで、テーマは月経困難症と月経前症候群についてお話しさせていただこうと思います。

 まず、現代医学的な解説から説明させていただこうと思います。月経困難症は、月経が始まってから下腹部痛、頭痛、腰痛、などの疼痛、それから不安感、悪心、嘔吐、食欲不振、便秘、下痢、目まい、顔面紅潮などの症状が現れます。それらの症状は月経が終了すると軽快していきます。原因は、機能性と器質性のものがあり、機能性では、プロスタグランジン説が有力視されています。他には、心因説、内分泌説、子宮筋過強収縮説、頚管因子説など、いろいろとあります。そして、器質性のもの、これは続発性月経困難症とも呼ばれていますが、子宮筋腫、子宮内膜症、頚管狭窄などが原因となっています。そして、月経前症候群、これは以前は月経前緊張症というふうに呼ばれていたものなのですが、精神症状を欠く場合もあるので、最近では月経前症候群というふうによばれるようになってきたということです。これは、月経が始まる一週間から10日位前から、身体的な症状は頭痛、腰痛、乳房痛、下腹痛、それからむくみ、便秘、下痢、などがおこり、精神的な症状はイライラ、緊張感、攻撃性、抑うつ、集中力低下、疲労感などの症状が現れます。そして、月経が始まってしまうと症状が軽快するというものです。原因は、エストロゲンの過剰説、鉱質コルチコイドの過剰説、ADH(抗利尿ホルモン)分泌の変調など、様々な説がありますが、未だにはっきりとした原因というのはわかっていないそうです。

 続きまして、東洋医学的にみた場合なのですが、月経困難症、月経前症候群とも、東洋医学的に、それそのものに相当する疾患名というものはありません。しかし、中医学では、四診法によって得られた結果から、病んでいる臓腑、経絡、病因を判断し、治療していきます。病名がついているものとしては、月経時、あるいはその前の下腹部痛を「痛経」とよんだり、月経周期の異常は、通常よりも一週間以上早まるものを「経早」(経絡の経に、早は早いです)、あるいは「月経先期」とも呼ばれています。それから、一週間以上遅れるものを「経遅」(遅は遅れるという字です)、これは月経後期とも呼ばれています。そして、月経周期が早まったり遅くなったり不定なものを「経乱」(乱は乱れるという字です)、さらに不正出血、これを「崩漏」(崩は崩れる、漏は漏れるという字です)と呼んでいます。月経に関する生理なのですが、関係のある臓腑は、腎、肝、脾、それから奇恒の腑としての女子胞があります。女子胞は胞宮とも呼ばれています。経絡は、任脈、衝脈、督脈、帯脈であります。それぞれの主な働きとしては、皆さんご存知だとは思いますが、腎は津液を蔵している臓で、生殖活動に関わっています。素問の上古天真論には、14歳で天癸(男女の腎の精気のことです)が至って、任脈が通じ、タイショウ脈(奇経の衝脈のことです)が盛んになり、月経が時折くだり、だから子供をつくることができるというように書いてあります。そして、肝、肝は血を蔵しておりますので、血の過不足によって月経に影響を与えています。それで、脾は統血作用によって、血が外に溢れ出ないようにして、月経血がむやみにこぼれでないようにしています。そして女子胞は、月経や妊娠をつかさどっているのですが、池田先生は、女子胞は筋でできているので肝の支配を受けているというように説明されています。経絡、経脈ですけども、任脈、衝脈、それから督脈がこの女子胞、胞中から起こっています。特に任脈、衝脈は血を蓄え、腎の調節を受けて、血が下ることによって月経が起こっています。帯脈は、臍の高さあたりで体幹をぐるっと一周巡って、縦に流れる経脈の調節をしています。帯脈穴はよく婦人科疾患によく効くツボだというふうに言われて使われているようです。一応、説明はこのようなもので、一例をあげたいのですが、患者さんがいませんので、例としては自分の体験ということになります。

 私も月経前症候群というのがよく起こります。月経前症候群は女性の90パーセントが経験しています。その中で治療の必要があるのは、5〜10%ぐらいだそうです。ほとんどの女性が月経前に何らかの不調を経験しているということになります。実際、私の場合なのですが、だいたい月経が始まる一週間から十日ぐらい前から、むくみ、それから下腹部の張った感じ、便秘それから背中の痛み、イライラ、抑うつ傾向というような症状が現れます。月経が始まると、月経血の色は暗紫色、時折塊が混じっています。質はやや粘稠であります。量は多いときと少ないときがあります。だいたい交互にくるような感じです。月経の期間は五日から七日ぐらい、月経周期はほぼ一定ですが、たまに早く起こることもあります。以上のことから考えていくと、月経血の状態からだいたいお血があるということは想像できると思います。だから、私の場合、月経前に現れる症状の殆どは肝実、お血があるから起こっているというふうに言えます。やはり治療は肺虚肝実証で行うことが多いです。治療をすると、不快感が軽快し、二、三日以内に月経が始まります。普段はこのような感じで経過していきますが、ごくたまに年に一回か二回あるかないかというぐらいなのですが、ひどい症状になることがあります。月経開始直前の日、あるいは始まる当日に顔が青ざめるほどのひどい下腹痛が急激に起こり、同時に全身の冷え、震え、冷や汗、悪心があり、しばらく動けなくなるということを経験していました。このような状態になると、手が震えて鍼ができないので、とりあえず全身の陽気を回復させるために神ケツの灸をします。自分用に棒灸を用意してありますので、棒灸を使って神ケツを温めます。しばらく温めていると、全身が温かくなって震えが治まってきます。それから本治法を行いますが、このときも肺虚肝実証が多かったように思います。いきなり始まるのではなく、症状が出る前から疲れた感じがあり、前日あるいは症状が起こる直前に、例えばパソコンの作業を長時間続けていたなど、無理をしてなっていたようです。おそらく、血が不足している状態で、さらに無理をして血を不足させたために、陽気が急激に不足してしまったためと考えられます。以上です。

 


(飯田)
広島で光が丘鍼灸院を開業している飯田と申します。当院では、初診の患者数は男性が4、女性が6ぐらいなのですが、述べ患者数にしますと女性が9割になります。つまり、続けて通ってくれるのは女性ばかりということです。どうしてそうなのかはわかりませんが。そのせいあってか、婦人科疾患の患者さんは大変症例数が多く、まず婦人科疾患で第一位にくるのは、更年期障害です。続いて不妊症、月経前症候群で、月経痛は若い女性でしたら皆にあると思っています。その他には無月経の方です、長いこと月経がこない。当院では、不妊症の方にも力を入れております。それで、このたび婦人科疾患について、特に月経を中心にということでお話を承りまして、やはり現代医学的な月経の説明から入ろうと思ったのですが、今もう既にあらかた説明していただきましたから、とりあえずここだけは押さえておいてほしいと思う所だけ言わせていただきます。

 まず月経について語る前に、月経とは何か、子宮とは何か、ということだけを簡単に説明させていただきます。子宮とは、子宮内膜に内側を覆われた、厚さ1cmほどの筋肉でできた袋です。正常月経とは何かと聞かれたら、月経とは通常約一ヶ月間の間隔で起こり、限られた日数で自然に止まる、子宮内膜からの周期的出血です。我々が扱う疾患の中で特に多いのは、月経困難症、月経前症候群、続発性無月経だと思います。月経痛そのものが治療の対象になる場合が多いのですが、月経の仕組みとして、この二週間ほどで成長した子宮内膜を子宮の収縮によって排出するのですが、そのときは必ず痛みは出てくるものなのです。仕組みとして、プロスタグランジンの作用によって子宮筋が収縮して排出されるわけですから、かなり腹筋をすれば腹筋をした瞬間は筋肉に力を入れるので、それなりの痛みが出る、子宮も筋肉ですから収縮をすればそれなりに痛いということになります。子宮内膜の中にもたくさんプロスタグランジンは入っているわけですから、子宮内膜を潰して押し出すとなると、もっとギューっと筋肉は収縮するわけです。筋肉は収縮するのは当たり前なので、収縮させないようにしてしまったら中身が出ないわけなので、これを止めるような治療はしてはいけないのです、当たり前ですね。腹筋をすると腹が痛くなるので、腹筋を動かないようにしてくれというのは、ありえない話ですからね。だから我々の治療は、その月経痛がひどい人、あるいは月経に伴う症状がひどい人の症状をとってあげる、あるいは軽くしてあげる、というのが目的で、月経そのものを治療するわけではなく、月経異常を治療するというわけです。そのことを押さえておいてください。


 月経異常とは何か?まず初めて月経の来るときの異常です。早発月経…初経初来が10才未満。遅発月経…初経初来が15歳以上、月経周期日数というものもありますが、正常範囲が周期日数25〜38日の間で、絶対28日でなければならないわけではありません。人それぞれなのです。38日でも毎回38日周期で来ている人は正常なのです。ただ、その変動が6日以内であってほしいということです。この月経周期の異常としては、希発月経(月経周期が24日以内)、遅発月経(月経周期が39日以上)、不正周期(月経周期が25〜38日で規則的にこない)、月経持続日数の正常範囲は3〜7日で、それを越えると過短月経・過長月経となります。量の異常としては、過多月経(月経血量が異常に多いもの)、過少月経(月経血量が異常に少ないもの)、少ないのも異常になるのです、先ほど、鍼灸院で来る場合も多いと言った続発性無月経とか、月経が来る来ないになりますね、原発性無月経は満18歳になっても初経が来ない人、続発性無月経は月経が三ヶ月以上停止している人です。


 鍼灸院で取り扱うことの多い月経関連のナンバーワンは月経困難症でしょう。月経困難症とは、月経期間中の何らかの治療を必要とする月経随伴症状のことです。女性には大なり小なりあると思うのですが、月経中の下腹部痛、腹痛、下腹部不快感、付随する症状としては、イライラ、疲れやすい、眠いなどがあります。こういう症状が治療を必要とするほどひどいということです。月経困難症の症状は、整体だろうがお灸だろうが中国針だろうが経絡治療だろうが、簡単にとれます。ひどくならないようにするには体質改善が大切なことは言うまでもありません。


 次に多いのが月経前症候群。先ほども説明していただいたPMS、以前は月経前緊張症とも言われていたものです。この月経前症候群とは月経開始前3〜10日ぐらい前から始まる精神的身体的症状で、月経とともに減退、消失するものです。月経周期の黄体期にに繰り返し出現し、様々な身体的精神的あるいは行動的症候により、対人関係や日常生活が障害されるもの、これが月経前緊張症、月経前症候群です。当院の患者さんでは、仕事の退職を余儀なくされたり、長期間の休職を余儀なくされる、本当にしんどくてうつになってピクリとも動けないとか、そういった方もいらっしゃいます。ただこれらの治療も症状は比較的簡単に取れてきますし、体質改善も重要な項目であるということは言うまでもありません。


 次に鍼灸院に来院される割合が多いのが続発性無月経。痛みなどの症状はないのですけど、三ヶ月以上長期に月経が来ないのです。こういう場合は痛みを取るとか症状を取るとかいう訳にはいきません。なにもないのですから、体質改善そのものが治療目的になります。以上です。

 

(岸田)
補足なのですけども、脉の変化についてお話しさせていただこうと思います。脉の変化というほどたいした変化を見ているわけではないのですけども。難経には…難経のどこでしたかはあまり覚えていないのですけども、命門は胞につながっていて、それぞれ男性は精を蔵し、女子は胞につながっているということです。月経の異常として脉の診る位置は右の尺中というところで、尺中の脉でよく表れてきます。それで、月経前になると、右尺中の脉が浮いてきて、正常であればつやがあって丸みのある脉を手に触れるんですけども、異常がある、例えば月経がなかなか起こらないとか起こっても大変量が少ないというような状態の時には、浮きが少なくて、むしろ沈んだところにあって、滑らかな滑脉ではなくてざらざらしたような渋脉がよく触れます。それで、月経がもうすぐきてるか、順調にきているかということをある程度判断することができます。

 

(飯田):まだ時間が余っているようなので、皆さんが一番取り扱うことが多い月経困難症について、症例をもとに簡単に解説させていただきます。


 まず、月経困難症の患者さんを診るにあたって、妊娠したことがあるかどうか、つまり子供を産んだことがあるかどうかというのは重要です。この月経困難症には原発性の月経困難症と続発性の月経困難症に分かれるのですが、初潮後1〜2年、思春期の頃から発症して、月経の直前から月経の初日・2日目くらいに『お腹が痛いのです。』というのは、これは原発性の月経困難症です。これらのものはもう普通に皆さん治療していただいて、たいてい肝虚証とか肺虚肝実証などで、お腹には、僕の場合は直接ちくちくと少し豪鍼で0.5mmくらい帯脈に接触鍼をして、腰とお腹を箱灸などでしっかり温めています。このしっかり温めるというのは、かなり重要です。原発性月経困難証というのは先程説明した子宮は筋肉の袋で、それが収縮をするのです、これがプロスタグランジンの働きで収縮しすぎると、子宮内膜が破れて押し出されその時にプロスタグランジンが子宮内膜の中からドバッと出て、もっと収縮がキツくなり収縮しっぱなしになってしまいます。すると当然血液が流れなくなって筋肉痛、虚血性の痛みが出てくるわけです。それを温めてやることで、とても和らげることができるのです。だから子宮そのものの働きは妨げずに血行を良くしてやる、温めてやることによって痛みを軽くしてあげることができるのです。これは比較的簡単に治療できます。とても簡単な症状です。


 続いて続発性月経困難症です。こちらの方は成熟期、20才を過ぎてから起こるもので、月経前から月経の数日間、これは妊娠しようが、子供を産もうがほとんど変化なしです。妊娠してもしなくても痛みがひどいでしょう。月経の始まる直前どころか、数日、4日くらい前から悪かったりするものです。これが続発性の月経困難症です。原因としては子宮内膜症があったり、子宮筋腫があったりと様々なのですが、鍼灸師としてはそれは分かりません。お腹をなでたからといっても、よほど巨大な子宮筋腫でもない限りは発見できませんからね。こちらの治療は東洋医学的に診てやはりたいていの場合は肺虚肝実証で治療することになります。この続発性月経困難症の患者さんは、たいていの場合月経前症候群を伴うことが多いものです。やはり元々そういうものを持っているのです。症例としては32歳の方で、産婦人科に通いながら、カイロだの指圧だの色々なところに通って治療しているのですが、あまりにキツいので、仕事のストレスに耐えられず、公務員なのですが、初診時で既に三ヶ月間仕事を休んでいる、という患者さんでした。もうこのままでは仕事を退職するしかないという状態の患者さんでしたが、これも肺虚肝実証を、時にはその日の体調によって腎虚証なども交えて治療をして、これにより、一月もたたずにあらかた改善して職場復帰が可能になりました。ただ、職場復帰をしてもある程度、生理の10日ぐらい前になってくると背中が張ってきて痛い、肩が凝るとか症状が強くなってくるので、当院に週に二回程度通って治療をして、仕事を続けているという患者さんです。こういう患者さんに当たると鍼灸師冥利に尽きるというものです。仕事を辞めて「もう人生おしまい」と思っている患者さんが、治療を受けることによって普通に生活が送れるようになり「ありがとうございます」という症例です。

 

 

(古木)
シンポジストの先生方、どうもありがとうございました。成熟した女性というのは月経、妊娠、出産、乳汁分泌、おりもの、帯下とか、こういうものは本来生理的な現象ですので、成熟した女性の心身が非常に健全であればこれらの異常は起こらない。


 今、岸田先生の方からは月経の異常の中の特に我々の臨床的にもっとも遭遇しやすい月経前緊張症。月経が始まる前に色々な不定愁訴がでる。月経が始まってしまうと消えてしまう。それからもう一つの月経困難症というのは、これも随伴症状ですけども、月経が始まる前ではなく、月経が始まる直前から具合が悪く、月経が終わると消えてしまう。そうしたお話をしていただきました。


 飯田先生の方はいわゆる女性の月経にまつわる、月経異常というものの広範な話をしていただきました。あと月経困難症の治療の方法をお話ししていただきました。


 この月経異常の本来の捉え方ですけども、何も病気が、診察検査をしても何ら変化がないのに、やっぱり色々な月経異常が来るということは女性の心と身体の全身的なバランスが崩れると、その一つの現れとして月経異常がきます。そういうことをキチッと頭に捉えていただきたいと思います。こういう患者さんには、我々の治療が非常に適応しますので、心の色々な、この器質的な間脳下垂体卵巣系の異常という言い方をしますけど、間脳というのは脳みその感情を支配するところ。それから下垂体というのは内分泌を支配する中枢器官みたいなところです。それから卵巣系というのは卵巣子宮ですから、女性の生殖器の異常。こういったところに器質的な異常があると。これは非常に難しいので、我々の手には負えないような月経異常が来ますので、そういうことを頭において、これからフロアの皆さんからシンポジスト両名の方に色々質問していただく、あるいは自分の意見なども述べていただければ結構ですので、どうぞ宜しくお願いします。

 

 

(福田)
 飯田先生にお願いします。月経困難症の患者さんの場合、月経周期のどういう周期に合わせて治療日程を決めているのですか?それとも定期的に?

 

(飯田)
 月経困難症には先程も喋った通り、月経中に起こる症状ですから、もうこれは月経のときのみです。この月経の時のみに生理痛とか身体のだるさを取ってあげる。だから簡単に治療ができると。それで来月にも同じ状態になるのがツライとかいうのがあれば、そのような月経の重い人というのはかなりの場合で冷え症とかそういうのを伴っている場合が多いので、そういう体質改善の治療に他の日に来て下さいと。月経の痛みだけだったら今日だけでいいですよ、でも体質を変えてこういう風なことにならないようにするために、全身を健康にするためには、普段から通うことが重要ですよという説明をしています。

 

(福田)
 例えば月経困難症の場合、緊張症もありますから。例えば起こる予定の何日か前とか…

 

(飯田)
 困難症と緊張症は別物だと考えてください。これを一緒と言うとただの生理痛の重いものだろうとか、そういう考え方に結びつきますので。鍼灸師としてはどんどん病気の範囲を広げがちなのですけど、月経前緊張症は対人関係とか、日常生活に支障ができる。本当に横になっているしかないような、到底仕事なんかできないようなそういう状態の人が治療対象です。殆どの女性の月経困難症のお腹が痛い、しんどい、だるいというのはそこまでには入らない。だから通常の月経困難症として痛みを取ってあげる。だから、治療は当日ですよ。生理が始まったんですっていう患者さんが来て、今日は何日目ですか、今日が初めてです。昨日から始まりました。今日2日目です。それで、その時に治療してあげれば、まず翌日翌々日にはもう痛みはなくて、普通に治療直後から楽になってると。だからこれは週に2回来なさいとかいうような継続治療感覚というのはありません。月経困難症は痛い時だけ来なさいと。それで、続発性の月経困難症の方、これはさっきも言った通り月経前緊張症を伴いやすい。月経前症候群も伴いやすいんですが、これはもう器質的に変化があると。子宮内膜症だったり、子宮筋腫だったり、頸管かどっかが細いとか何かよく分からない原因があると。そういう症状の方については最低週に2回できれば3回、自分の身体が楽なように通ってくださいと本当に仕事ができないほどひどくてすぐに復帰したい場合は毎日でもいらっしゃいと言っています。その場合では今の所うちの症例は全例回復してますので、それでよろしいのではないでしょうか。

 

(福田)
 ありがとうございました。ついで続発性の無月経のお話が途中で途切れていたみたいなので良かったらその話をお願いします。

 

(飯田)
 続発性無月経とは、もう初潮はあったし、普通に生活していたのに何らかの原因で3ヶ月以上月経が来なくなったというもの。もちろん妊娠は除きます。どういう場合が多いかと言えば最近の若い子なんかはダイエットが原因の場合が多いです。ストレスとダイエット、この二つが一番の原因です。例えば大学を卒業して就職した。そこですごい精神的ストレスを受けて生理が止まり、それが三ヶ月以上続く、あるいはダイエットをしようと思ってダイエットのしすぎで脂肪組織が減った結果、女性ホルモンも減ってそのせいでやっぱり月経が止まってしまう。そういう患者さんのことです。

 
 一例を取り出しまして説明しますと、まず20歳女性の患者さん。この方はお腹の調子が悪くてお肉を全く食べてないのです。そのせいでもう生理が止まっていて、産婦人科に通って生理を誘発するお薬の注射をしてもらって、ようやく生理が来るという患者さんです。それで、その治療はそれぞれ患者さんによって違うのですが、まず生活指導。やせ過ぎの人には太るように。お腹の調子が悪くて食べられない人にはお腹の調子が良くなるような治療をしてあげる。また、ストレスが多い人と言うのは肺虚肝実証とかの患者さんが多いのでそういうのを治療してあげて、ストレスを取ってあげて治してあげる。ここで治療効果がどのくらいで現れるかという問題ですが、生理痛の場合だったらその場で、治ったでしょう?良かったです、というようにいくんですが、この続発性無月経の場合は月経が来てないのですから、治療直後に月経が始まるということはありません。これは人間の身体の仕組み上そうなっていまして、例え初回の治療が完璧に効いたとしても、生理が正常に始まるのは三ヶ月後なのです。だから治療が効いているかどうか分かるのは三ヶ月以上経った後になります。今の20歳の患者さんの場合はお腹の調子を良くしてあげて、お肉を食べれるようにしてあげると。その後体重を増やしてあげた結果、三ヶ月で7回の治療です。これで生理が正常に来るようになりました。

 

(水戸)
 学生会員の水戸です。器質性疾患というのは、どうすれば判断できるのですか?

 

(飯田)
 器質性疾患というのは、診断権は鍼灸師にはないと思うので、これを診て、「あなたは子宮筋腫がある」とか、「子宮筋腫だ」とか、そういうことは言ってはいけません。それで、この場合は産婦人科との連携になります。産婦人科というのは、例えば鍼灸の保険についての同意書なんかも発行できるので産婦人科と連携をとりながら患者を治療するということもありです。だから子宮の器質的疾患を診るためにはやっぱりエコーとかでお腹を診たりしなければなりません。鍼灸師側としては患者さんに対する問診をして、続発性か原発性かというのをある程度想像できますよね。昔からね、もう中学・高校の頃から痛かったんですか?月経のときになると痛いんですよと言ったらたいていの場合、原発性ですよ。

 
 ここ最近30代になってからしんどいんですよとか、20代半ばからだんだん悪くなってきて、今年に入ってから生理の2、3日前から動けなくなってくるとか、気を失うとか、そう言ってきたら続発性なので、続発性の月経困難症のある人、例えば20代後半の人だとそろそろ子宮頚ガンが恐いですし、必ず産婦人科も受診するように薦めています。そういったことを説明すれば患者さんが鍼灸院に来なくなることはないです。鍼灸師が病院に送るのに恐れているのは西洋の医者ばかりを信頼して戻らないのではないかということが心配なんだけれど、きちんと説明すれば、そういったことにはなりません。当院の場合は、他の病院とかでも患者さんを紹介しあったりするし、病院の方からも紹介状とか、みんなやり合っています。だから、鍼灸師と医者でもそういった関係を築けます。

 

(岸田)
 飯田先生の言われた通りだと思います。触って、子宮筋腫があるとか、よっぽど大きくなっていたらわかるかも知れませんが、普通に触った感じでは全然わかりませんので、そのため問診で原発性か続発性か飯田先生がいわれた通りだと思います。

 

(古木)
 器質性かどうかは我々はきちんとした診断は出来ませんが、女性でしたら、月経血の状態を聞いてもらうのがいいと思います。正常な月経というのは凝血がありません。血の固まりはないはずです。これがあると不正出血の証拠になりますので、これは重要な情報になります。

 もう一つは月経の黒みが帯びてくる場合は、ひょっとすると危ない。月経血の塊があるかないか、色が紫とか黒みを帯びてくるかどうか、そういったところが問診で重要なことであると思いますので参考にしてください。

 

(中野)
 飯田先生にお願いします。子宮筋腫や子宮内膜症に対する、症状・治療といった症例があったらお願いします。

 

(飯田)
 鍼を打って子宮筋腫が見る見る小さくなって、消えてなくなったという症例はないのですが、産婦人科医と連携して子宮筋腫のサイズがどうなっているかで、小さくなった症例はありますし、また子宮内膜症の患者さん、この患者さんで多いのは、とにかく気持ちが悪い、気分が悪い、というのが特徴です。これらは皆さんが滋賀で学んでいる経絡治療で十分に治療可能です。子宮内膜症の患者さんも治療直後から体調が良くなります。ただ、子宮内膜症のあちらこちらにできている子宮内膜が収縮したかどうかは開腹して見たわけではないのでわかりません。

 

(中野)
 すみません。どのように治療をされるのか教えてください。

 

(飯田)
 これは当院の治療法になりますが、最初に脉を診て、舌を診て、顔貌を診て、体表観察をして、勿論お腹も触りますし、尺膚も触りますし、下腿も全部触ります。それで患者さんの体質を見極めて、てい鍼を使った本治法、標治法を行い、冷え症のある人だったら、今使っているのはダルママイルドという灸なのですが、カマヤミニの弱よりもさらに軟らかい灸です。ツボ灸、チョウセイ灸よりも軟らかい灸です。こちらの方を下腿の方に行ったり、腰部を温めるのに使ったり、腹部の緊張部分です、神ケツ(臍部)の上下左右の硬結のある部分に一個のせて使ったりします。あるいは、さらに強い冷えのある方は箱灸に大きなモグサを入れて鍼を打ったまま灸頭鍼みたいに温かくなるようにします。

 

(古木)
 箱灸というのは、盲学校に一つ置いてありますが、温めるのによいです。しかし実物を見ないとわからないので、是非見て一度使って下さい。

 

(二木)
 飯田先生と岸田先生に質問です。器質的疾患の中に入る子宮頚の後屈が若い人に多いので、症例や考えがあったら教えて下さい。

 

(岸田)
 症例は先ほど話した通り、数か少なく診たことがありません。子宮頚の後屈も調べた中では載っていなかったのですが、私の親が若い頃に子宮が後屈していると言われたということがありますので、症状として月経は現在は閉経してありませんが、あった時は後屈しているからどうのというような症状は訴えていませんでしたし、特に後屈しているからといって、症状がでる場合もでない場合もあるのではないかと思います。

 

(飯田)
 子宮頚の後屈に対して気にしたことはありません。例えば、手技療法などをする場合、重要なことなのかもわかりませんが、経絡治療を行う際に子宮頚が後屈していても、それを真っ直ぐにするとか、前屈にさせるとか、まさか指を突っ込むわけにはいかないし、だから取りあえず今まで気にして治療したことはありません。

 

(二木)
 うちの場合、他の器質的疾患もついでに持っておられますが、運動選手も比較的沢山来られるということもあって、若い女性には多いです。本当に子宮頚が後屈しているから月経痛を発生させているのか、また他の疾患が発生させているのかわからないけれども、生理の時に月経期間中に腰痛がひどくなる。しかも特に志室穴あたりの高い位置の腰痛の時に子宮頚の後屈が関係しているような印象です。治療としては普通の腰痛の治療をしていくだけで、飯田先生が発言されたように指を突っ込み前に倒すわけにはいかないので、後屈がかなりよくなったという検査での例があるので、痛みさえ取れれば、後屈していること自体はあまり僕も気にはしていません。


 蛇足ですが、どうしても器質的疾患の中で大きくなり過ぎた卵巣嚢腫とかも、子宮筋腫でも程度が進みすぎると外科術が必要となってきます。

 一番、僕が臨床の中で手こずったのは子宮脱、子宮がずれるというか落ちてくるというか、これは3例ほど経験したのですが、3例ともに外科的に除去しないとどうしようもなかったです。

 

(飯田)
 先ほど指を突っ込む話をしたのですが、これは決して笑い話ではなく、民間療法の中では、また一部の産婦人科では本当におしりとか前の穴に指をつっこんで、後屈を修正するんだとか言ってやったりすることを聞きます。ですが、僕は当然そんなことをしたくはありません。

 

(古木)
 普通の産婦人科では後屈といった話は出てきません、昔からよくおばぁちゃんがなんか「寝腰」が痛いとか、不眠症になるとか、そんなことを聞いてますけど、文献で私も聞いたり読んだことはないです。「寝腰」です、寝ていると痛いんです。朝起きると、もう痛くないとか。

 

(中野)
 岸田先生と飯田先生に質問ですが、婦人科疾患になると下半身の冷えが非常に重要になってくると思うのですが、何かの治療をするときのアドバイスをお願いします。

 

(岸田)
 これも自分の例ですが、大抵本治法をすると足が温まってくるので、どこかに灸をするなどはないですが、先ほど喋ったように、ひどいときは本治法をしてもなかなか私の場合は右側の方が冷えを感じるのですけど、その右側 三陰交穴に圧痛が出ますので、そこに透熱灸をすることはあります。

 

(飯田)
 婦人科疾患に冷えと言いますが、冷えの傾向のある方は症状が強いということもありますが、やはり陰虚熱がある方があれば、水滞でブヨブヨしている方、冷えを持ってから下半身が冷えている方、あしのうらまでポッポと熱い方と色々おられますけど、月経困難症の場合においては冷え症の方が多い。月経前緊張症の方については冷えのあるなしに関わらず、月経困難症の症状は出ます。それで、確かに冷えのある患者についてはどちらにしても症状は強く出ると思います。そのような方は、自宅にて足温浴や半身浴、つまりお風呂の中に洗面機かイスを沈めておいて、そのイスに座ってから汗が出るまで座っておくようにと、そういったものを薦めています。

 
(西野)
 飯田先生にお願いします。月経痛のことなのですけど、痛みが出てから治療院に来られるということですが、家で動けないほど痛い場合治療院に行くのはしんどいと思うので、月経前に月経痛を防ぐことが大切だと思いますが、どう思われますか?

 
(飯田)
 そこまでひどい人は大抵の場合生理前・前日、先ほど月経困難症で続発性の場合では2〜4日前から症状が出てくるので、そのときから手をうっておきます。それで、普通の月経困難症の原発性はそこまで痛い人は当日に予感がしてくるとか、当日から体調がおかしくなってから来ていただいています。また、そのような方は皆さん薬も併用していますから薬で耐えてもらっています。東医の人は生理の患者に薬はやめろとか、薬はどうのこうのといった説明はしていませんし、産婦人科医のところは行くなといったことは言っていません。鍼灸治療はとてもよく効くもので、薬を使っていようが、使っていまいが、とても良く効きます。

 

(小坂)
 飯田先生と岸田先生に質問なのですが、ウチの患者さんで、温めればよくなるということで腰とお腹に灸頭鍼をしていますが、家でもカイロをつけている、職場でも電気アンカでずっと温めているということで一日中温めているというのは、どうなんでしょうか?

 

(岸田)
 一日中、腰・お腹を温めているということは良くないと思います。

 特に筋肉などは温めると伸びるような性質がありますので、ずっと温めていると、二木先生の所に勤めているときからよく言われていたのですけど、腰の方にずっとカイロなどで温めていると、やっぱり後々腰のほうの筋肉のほうが伸びきって、しっかりしてこないので治療としては一日中付けておくのは止めたほうがいいと思います。ひどいときにお腹だけ温めるだけにしたほうがいいと思います。

 

(飯田)
その患者さんは生理の時だけ温めるのか、それとも一年中温めているんですか?

 

(小坂)
ほとんどです。夏は暑いから腹巻程度で、ほとんど温めています。

 

(飯田)
 みなさんはずっと温めたらいけないと思っていらっしゃる方が多いと思いますが、私は保温は重要と思いますので、そんな症状がきつくて患者さんが温めたいというのであれば、「是非温めてください」と患者さんに説明しています。これは痛みをとったり、冷えで腰痛があるといった症状を軽くするために保温というのはとても効くので重要だと思います。ただ年中必要という方は元々体質が悪いということなので、灸頭鍼をするのもいいですが、そちらの方の体質・生活習慣・食べ物を改善して、そのような保温がなくとも、腹巻一枚で済むように治療をしていくほうがいいと思います。ウチでは、温かいカイロを張りたい患者さんには、どうぞどうぞと言っています。そして、症状を取っている間に体質を変更するように治療・生活指導をしています。

 

(二木)
 僕も二人と大きな差はないのですけど、温めるのは症状がきついのであれば、年中温めてもそれほど問題はないと思います。ただ、岸田先生が言われたように腰を持続的に温めるというのはあまり賛成はしていません。確かに、腰痛がある方で、腰にカイロを当てると消失することはありますけど、例えばよくあるのが腰痛があるから温泉旅行に行って腰を温めすぎた後に帰ってきたら動けなくなったのがいい例です。腰自体はあまり長時間温めないほうがいい。温めるとしたら、お腹のほうを。加えて言うのなら、飯田先生の言うように体質改善のほうが大事です。三陰交穴・地機穴あたりの反応、灸でねらうなら中都穴・蠡溝穴は女性なら100%痛いです。どちらかを見ていただくこと、もう一つ見ていただきたいのは、胸に熱が溜まってしまい全身にいかない場合があります。胸苦しい、その場合は胸の熱をとってほしい。一番、簡単な方法で、即実行してほしいのは膈兪穴の圧痛を見てください。膈兪を施術するだけで、胸の熱が抜けることがかなりあります。以上、横から失礼しました。

 

(外村)
 今、小坂先生の治療で背中・お腹を温めるという灸頭鍼、これは陰と陽を両方温めるから、ケンカするんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか?

(岸田)
 お腹・背中で陰陽と考えて灸をしないというのは考えていませんけど、特定穴、例えば膀胱炎なら中極穴を使ったほうがいい場合はお腹に中極穴にお灸をし、さらに仙骨部に反応があればお灸をするということはやっています。

 

(飯田)
 お腹と背中にお灸をして陰と陽がケンカして体調が悪くなったという例がないので、なんとも言えないのですけど、そういうことを考えて治療はしていません。普段、お腹と背中にお灸をするということは岸田先生がいわれたように、膀胱炎の患者さんだとか尿関係でしたら八リョウ穴だとか中極穴・関元穴にお灸をするセットで使っているので陰と陽とでケンカをしていると言われればそうかもしれませんが、とりあえず不都合を感じたことはありません。

 

(外村)
 ありがとうございます。もう一つなのですが、二人の症例のなかで、肝虚・75難型の治療をしたということですが、一応血の病として肝が影響し、肺虚肝実なのは理解できるのですが、肝実の時に脾が影響する場合があると思うのです。飯田先生の二例目で肉を食べていないなど食事の関係があると血の生成にも影響してくると考えると、脾虚肝実・脾や腎が虚しているものも考えられると思うのですけど、症例の中では肺虚肝実が圧倒的に多いと判断していいのか、二人にお願いします。

 

(岸田)
 肺虚肝実症も多いと思いますけど、他の原因によって、例えば血虚であれば肝虚症で治療できますし、脾の 統血作用が不足であれば脾虚症、脾虚肝実症であれば肺虚肝実症の肝実とは脾虚肝実とで成り立ちが違うと風邪をひいて外邪が肝胆に入り、波及して脾を弱めて脾虚肝実症となる。よって脾虚肝実証。この場合には月経異常が起こります。

 

(飯田)
 肺虚肝実証が多いと診てもらっても構いません。その他に脾虚にとる場合もあれば、肝虚、肝陰虚証など色々ありますが、肺虚肝実が中心と思ってもらって構いません。肺虚肝実だからと言って、本治法だけして他の治療はしないということはありません。大抵の場合は女性ですから、女性の場合 太谿、足三里といった胃経、腎経の方に先程説明した温筒灸、カマヤミニよりも弱いやつなどを使っています。これは、肺虚肝実症で脾は正常だから、腎は正常だから使わないということでなく、通常標治法として使っています。

 

(古木)
 どうもありがとうございました。そろそろ時間が来ましたので、フロアからの質問はこれで終わりたいと思います。最後に少しまとめたいと思うのですが、うまくまとめられますかどうか。


 この月経異常というのは、中医学的に診ると、一つは気滞、気が滞ることです。気が滞ってさらにひどくなると今度はお血という形になります。だから気滞血オという形で捉えることが多いのです。気滞が起こる原因としてはストレス。また、ストレスが講じて血に影響すると今度は肝実という形になりますので、だから先程二人のシンポジストの話で、肺虚肝実が多いというのはこの関係だと思います。ところが月経異常が起きるのは、こういう気滞血オだけではなく、痰飲というのもあります。痰飲というのは身体に余計な水分が溜まる。これが気と血の運行を妨げて月経異常が起こるという形になります。痰飲だと脾虚がでてきます。それからもう一つ水分代謝という形から来ると腎が関係するんです。腎虚です。しかもこの月経異常は多くの場合、冷え症状を伴いますので、陽虚を伴ってきます。ですから肺虚肝実であるとか、脾虚肝実であるとかいったお血がらみの証と、それから血不足で起きる血虚という形で、肝血虚とか。それから脾に来るもので、肝陽虚、とか腎陽虚とかの証が出てくると思います。


 昨日私がテープを整理していましたら平成15年の12月に私に回ってきたテープの中に、漢方鍼医会の渡部恵子先生が婦人科疾患の鍼治療ということで、自分の経験を交えながら婦人科疾患に対する全般的な話を120分でしておられます。これをぜひ聞いてほしいなと思います。今日ここのシンポジウムで優秀な二人の臨床家の話も聞きましたし、それから皆さんが臨床室の中でそれぞれ自分の体験した月経異常の体験のこともあるでしょう。それからもう一つ先程の渡部恵子先生の婦人科疾患の鍼治療というこのテープを、臨床家のはなしとして非常にうまくできていますので、是非今日帰ったら自分の経験とこの話を照らし合わせてもらうと、月経異常、婦人科疾患に対する治療というもののおおよその形が分かってきますので、それを活かしてほしいなと。そういう希望を申し上げまして、このシンポジウムを終わりたいと思います。


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