尿路上皮癌(膀胱癌再発)による排尿障害
2020年1月19日
尿路上皮癌(膀胱癌再発)による排尿障害
発表:中尾 俊哉
・結果について
紙おむつを使っていますが、80%改善。
現在も治療継続中。
患者 81歳男性
・診察について
初診 2019年9月27日
・主訴
8月下旬に膀胱癌再発による手術、退院後しばらくして排尿コントロールが効かなくなり、紙おむつを使用してとても憂鬱とのこと。1日何回も替えることがある。
・既往歴
57歳 狭心症
72歳 甲状腺癌(左側全摘)
72歳 腎臓癌(左腎全摘)
76歳 前立腺癌
79歳 膀胱癌
81歳 膀胱癌再発
・四診法
望診 顔が赤っぽい。精気が感じられない
二便 便秘(薬の副作用大)
頻尿(コントロールできない)
脈診 浮・やや数 左寸口沈 左右関上浮 左尺中浮
腹診 腹部全体が冷たい
・考察と診断
西洋医学から
二年前の膀胱癌は膀胱内だけで排尿障害はしばらくして(期間は不明)普段の生活に戻れたそうです。今回は尿路上皮まで再発しており、尿道括約筋が削られ、自分の意思ではコントロールが難しくなったと思われます。手術執刀医が言うには、完全に元に戻るのは難しく、かと言って人口膀胱をつけるまでではないと言われ、薬も処方されませんでした。ちなみに近所の主治医から過活動膀胱を抑える薬と膀胱に尿をためる薬を処方されました。しかし、副作用で便秘がひどくなり中断。現在は副作用の弱い薬を処方されています。
漢方鍼治療として
薬をたくさん処方されています。10種(コレステロール・血圧・血液さらさら・胃)プラス上記の2種類です。左腎も摘出されており、正直なところ、どこまで脈診で判断できるのかですが腹部が特に冷たく、顔が赤っぽく精気がないので脾と腎を主に考えました。
・治療経過
初診時の治療
①本治法 脾虚陰虚証
②標治法 次髎・中髎 膀胱兪
③頭部、頸背部にゾーン処置
④背部に電器温灸器(びわ灸)
⑤運動療法
・患者さんへの説明
とにかく腹部全体が冷えているので、改善できれば自然治癒力が高まります。三ヵ月以上かかるかと思います。
・継続治療の状況
〇9月27日~11月2日(1回~9回目)
少しましになるが、紙おむつを日に何回も交替
〇11月5日~12月3日(10回~16回目)
腹部にぬくもりを感じられるようになってきた
夕方から排尿コントロール出来ないこともあるが、日に何回も紙おむつを替えることが少なくなってきた。
少し患者さんの表情に明るさが出て来た。
〇12月17日~1月14日(17回~27回目)
証を肺虚肝実証に変更
夕方調子が悪い日もあるが、1日中何もない日もあり、80%くらい改善。このころから患者さんも活動的になり、よく外出するようになった。
・結果
現在も治療継続中。まだ100%に至っていない。
・感想
とにかく最初は結果が出ず悩みましたし、患者さんも途中薬を変えたりしてひどい時には家から1歩も出ずにふさぎ込んでいました。現在80%くらいまで回復して、治療して良かったと思います。